●ヴァルター・タールシュトラーセ

本作主人公。若干二十四歳にしてヴァーグナー研究所の副所長を務める美青年。研究所の所長であるパウル・ヴァーグナーと共に『超常識戦艦dp-XXX カイザーブルク』を開発した天才技術者であり、「宇宙へ行くこと」を全てに優先して行動している。

スポンサーであった独逸軍を騙し、完成したカイザーブルグを駆って逃走――以後、オスカー少将率いる空軍第一航空艦隊『鉄鳥軍団(アイゼンフォーゲル』から追われる身となるが、本人は全く気にしていない。傲岸不遜を絵に描いたような性格をしており、常識に囚われる人間の心理を理解はしつつも軽蔑している。

カイザーブルグを『成長』させるために、あえてオスカー率いる空軍部隊と戦火を交えるなど、自身の目的を遂げるためには手段に頓着しない。国家をも敵に回し、それでも宇宙を目指す彼の“動機”とは果たして……。

後に『機甲神鉄槌事件』と呼ばれ、歴史に大きな転換をもたらすことになった大事件を引き起こした張本人。

 

「僕は駄目だと言われたらやっちゃう人ですよ」

 

 ●パウル・ヴァーグナー

ヴァーグナー研究所所長。年齢六十歳。十五年前に打ち上げられた世界初の有人宇宙船『ヴィルヘルム2号』を設計した天才技師であり、特に紋章技術に関してはヴァルターをして「独逸で一番」と言わしめるほどの腕前の持ち主。伯林大学で教鞭を取っていたこともあるなど、肩書きは超一流のインテリだが、性格は外見同様に頑固で口も悪い“昔かたぎの職人”そのものである。

かつて自身が設計し打ち上げた『ヴィルヘルム2号』は、不慮の事故により地球に戻れず――結果的に親友であった搭乗員を失った過去を持つ。船内の酸素が消失する直前、その親友――フーバー・タールシュトラーセと最後の交信を交わした彼は、号泣しながら友との再会を約束する。それから十五年後、『カイザーブルグ』を造り上げた彼は、一人の青年と共に宇宙を目指す。かつて誓った、友との約束を果たすために。

 

 「うるせえ、お嬢ちゃん、座席にちゃんと腰掛けな」

 

 ●エルゼ・ブロイアー

名門伯林大学に通う学生。年齢二十歳。独逸で五指に入る武器商人ガストン・ブロイアーの一人娘であり、何不自由のない将来を約束されている“お嬢様”だが、そんな自分の境遇に対し、強い不満を持っている。“自分のやりたいこと”を見つけられずにいた彼女だったが、屋敷の敷地に『カイザーブルグ』が不時着したことにより、ヴァルター達と遭遇――以後、自身の意思で彼らと行動を共にすることを決意する。

学園祭で花火を使って学長の銅像を吹っ飛ばす過去を持つなど、男勝りの稚気と行動力を持った生粋の“ジャジャ馬”であり、作中においても、そのバイタリティーをいかんなく発揮する。最初は好奇心からヴァルター達を手伝っていた彼女だったが、彼らとの交流を通じて、自身の“本質”に気づき、周囲もまたそれを認めていくことになる――無謀と言われることにあえて挑もうとする、生粋の“挑戦者”としての気質を――。幼い頃からブロイアー社の工場にも出入りしており、機械整備や銃器の扱いにも精通している。或る意味で“ズドン”の開祖と言える川上作品の初代ヒロイン。当然、脱ぎます。

 

「一発目は予行練習で、二発目は威嚇射撃よ。次から本番」

 

 ●オスカー・ミリルドルフ

空軍第五師団師団長。階級は少将。『鉄鳥軍団(アイゼンフォーゲル』を率いる歴戦の軍人であり、その任務達成能力は極めて高いとされる。単に指揮官として一流であるだけでなく、視野の広い国家観を持ち、また多くの部下達からも慕われるなど、まさしく“軍人の理想型”と言える好人物。

『カイザーブルグ』の超常的な性能を認めつつ、その存在によって国家間のパワーバランスが著しく狂うことを予見した彼は、その捕縛に全力を尽くすことを決意する。人が宇宙に行くことで時代が進んだとしても、それが戦火を呼ぶ火種となるのであれば全力で止めねばならない――その強い決意の下、“先を行こうとする者”であるヴァルター達に対して、“今を守ろうとする者”として総力を挙げて対峙することになるのだが――。

妻と娘を持ち、特に娘に対しては中学入学のプレゼントで頭を悩ますなど、子煩悩な一面も持つ。後にマイヤーが著したノンフィクション作品『お父さんのぶん殴り』の主人公。奥歯が折れても許さないらしい。

 

「あの機体を完成させてはならん……」

 

 ●マイアー・シュリアー

オスカーの副官を務める青年将校。階級は少尉。ヴァルターの大学時代の後輩であり、かつては彼と共にパウルの主催する研究室に所属していた過去を持つ。その当時は開発中だったカイザーブルグの製作にも携わっていたが、正式に軍に入隊してからは、互いに疎遠になっていたらしく、カイザーブルグの完成には立ち会っていなかった。

オスカーの副官を務めるかたわら、最新鋭戦闘機『フランメンリッター(炎騎士)』のテストパイロットも務める逸材であり、その操縦技術はヴァルターをして「僕以上ですね」と言わしめるほどである。並みの戦闘機では全く歯が立たない『カイザーブルグ』に対する切り札として、敬愛していた恩師と先輩を相手に戦場の空を駆け抜ける。

旧貴族の出身であり、家庭的にはかなり恵まれた環境で育っている。その為、自分に対して「レールの上を走ってきた」という評価を下しており、真逆の行き方を貫こうとするヴァルター達に対して、強い憧れを抱いている。そうした自身のコンプレックスを自覚しつつ、しかし彼らのようには生きられないと思い定めていた彼だったのだが……。

本作のみならず、その後に刊行された『巴里』や『伯林』において、何度となく名前が登場する“都市シリーズ”の重要キャラクター。

 

「あの人達は、どうして、ああいう風なんだろうな?」