propos de l'avant

 

『閉鎖都市』――その名が示す通り、巴里は数百年前から結界が張られ、内部では人も事物も、全てが『文字情報』として存在していた。

この『文字情報』とは、即ち「日記」や「手紙」である。現実世界では「人間が存在するから文章が書かれる」が、巴里内部においては「文章が書かれることで人や物が存在を保てる」という逆順的な構造をしていた。「生きているから書く」のではなく、「書かれているから存在している」と言う、途方もない逆転現象が起こっているのが、巴里という『都市』なのである。

だが、この都市は、後に大きな問題を抱えることになった。第二次世界大戦末期に独逸軍によって持ち込まれた『小型言詞爆弾』の爆発よる「第二の閉鎖」――即ち『連環(メタフィジコーズ)』である。

『連環』――それは1944年の8月6日に爆発した『言詞爆弾』の影響によって引き起こされた超常現象である。これにより仏蘭西全土は外の世界から切り離され、その内部は「1943年の8月6日から、『言詞爆弾』が爆発する1944年の8月6日までの一年間をひたすら繰り返す」という異常空間と化した。

まるで、誰もいない映画館で延々と同じ映画がリピートされ続けるが如く、巴里を中心とした仏蘭西の結界内では「1943年8月から1944年8月の歴史」が一年周期で繰り返されている。そしてこの『連環』に囚われた人間たちは、一年ごとに巴里内部で『初期化』を繰り返し、まさに閉じられた本の世界の人物となって、日々の生き死にを一年ごとに繰り返しているのだった。

外部との歴史から隔絶した閉鎖都市、巴里。その中で生きる人間達は、とうの昔に戦争が終結したことさえ知らずに一年を過ごしている。ただ一つの例外――外部からの「侵入者」を除いて。

時は1998年。54回目の『連環』を迎えた閉鎖都市に、米国から一人の『留学生』が訪れる。

彼女の名はベレッタ・マクワイルド。

54年前、『連環』開始寸前に巴里を脱出した女性を祖母に持ち、『重騎』と呼ばれる巨大な戦闘用兵器を駆る、強力な『重騎師(ナイトストライカー)』であった。

 

 

 

  「ヘイゼル先生! ヒオ、授業のことで分からないことがありますの!

 質問したいことが沢山ですの!」

 

 

 「あらあら、ヒオは勉強熱心ですね。その姿勢は素晴らしいですわ。

 そんなヒオには特別にご褒美を上げちゃいますね」

 

 

 「て、照れますの! でも、ご褒美って何ですの? スゴク気になりますの!」

 

 

 

 「ズバリ『自分で考える権利』ですわ」

 

 

 「丸投げ! 丸投げ入りましたわ!」

 

 

 「ふふっ、冗談ですよ、ヒオ。それじゃあちゃっちゃと質問しなさい。

 先生も忙しいんですよ。なにせ恋人の行動を予測して、行く先々に仕掛けを――」

 

 

 「犯罪! 犯罪予告が来ましたわ! って、先生! そんなことより質問ですの! 

 ヒオ、巴里の歴史を勉強したけど、よく分かりませんの!

 一体、この巴里ってどんな場所ですの? 『閉鎖』とか『連環』とかサッパリですの!

 

 「考えるな。感じろ!」

 

 

 「か、考える権利まで消えました! ヒオ、完全に詰みましたの!」

 

 

 

 「仕方ありませんの。この『巴里』というお話は、そこら辺がちょっと複雑ですからね。

 でも安心なさい。ヒオにも分かるような、とっておきの説明がありますわ。

 それが↓これですの」

 

       ●スタ×ド名 『連環(メタフィジコーズ)』   本体名 「閉鎖都市巴里」

        破壊力 ?  スピード ?  持続力 A(仏蘭西全土)  

        精密動作 A(再現度ハンパない)  成長性 ?

能力:内部の時間を一年ごとに繰り返す。中に居る人間は「繰り返し」に気づけない。 いくつかの条件を満たせば外から入ることも出来るが、一年たつと「異物」として吐き出され、二度と巴里には入れなくなる。また外部の人間が中で死んだ場合は、復活せずにこの世から消え失せる。内部の一切は全て『文字情報』として存在している。

    

 

 

 「分かりましたね、ヒオ? これこそが奴の能力なのです」 

 

 

 

 「ルール違反! ルール違反来ましたわ! これマズイですわ!」

 

 

 

 「コラボですわ! KO・RA・BO!」

 

 

 

 「開き直りましたの! でも先生、これじゃあ、どうやって『連鎖』を断ち切るんですの?

 さすがに『巴里』そのものは倒せませんの! 閉じたままでサヨナラですの?!」

 

 

 「いいですか、ヒオ。どんな時でも、「外」に出るための条件は一つなのですよ。

 出たいと思うこと。全てはそれから始まるのです。幸いを願いながら、ね。

 今回は、そういうお話なのですよ」