序章

 

1945年――第二次世界大戦の終結によって、人類史に永久に刻まれることになったその年は、しかし歴史に刻まれることのない“もう一つの戦争”が決着した年でもあった。 ごく一部の例外を除き、人知れず決着を迎えた“もう一つの戦争”――それを知る者は、その争いを『概念戦争』と呼んだ。

時は流れ、“終戦”より六十年後の2005年――尊秋多学院に通う高校生の佐山・御言(さやま・みこと)は、亡くなった自分の祖父が、かつて『概念戦争』に深く関わっていた事を知らされる。

 

「――御言君。君のお爺さん達が戦っていたのは化け物ではないんだな。あれは異世界の住人達だ。“この世界”と並ぶ十個の異世界。それらとこの世界は滅ぼし合ったのさ」

 

“この世界”の他にも存在したという数多くの異世界――G(ギア)と呼ばれ、惑星の軌道のように、接近と離脱を繰り返していた異世界同士は、「ある事実」が判明したことにより、互いに互いを滅ぼす為の全面戦争を開始したと云う。

 

「――全ての世界が周期上で重なることが判明した。そうなった場合、最も強力な力を持った世界だけが生き残り、他は衝突の衝撃で砕かれる、と」

 

“自分の世界”を生き残らせるために、他の存在する“全ての異世界”を滅ぼす――その『概念戦争』の中心に祖父が関わっていたと云うのだ。そして六十年前、佐山の祖父は仲間達と共に1stから10thまでの他のGを滅ぼし、最終的にLow‐Gと呼ばれた“この世界”を生き残らせる事になったと云う。突然に告げられた“事実”に戸惑う佐山に対し、追い討ちを掛けるようにして更なる難問が突きつけられる。

 

「――たった一つ残ったこのGは今、ある危機を迎えておる」

 

“全ての世界の生き残り”が住むこの世界Low‐Gに迫る危機とは果たして何か? そして、それを回避する為に佐山・御言が託された『全竜交渉』とは何を意味するのか? かつて数多の世界を“終わらせた”この世界は、それでも自分達を“終わらせない”という結果を、本当に導き出すことが出来るのか? かつて敗れた者達の感情と向かい合う時、佐山・御言が告げる『答え』とは――。

GENESIS、そして遥か遠くCITY まで、数多の時代に連なる始まりたる“終わりの年代記”の頁が、今ここに開かれる! 

 

 

 

 

 「あらあら、今日は宿題をサボって何を見てますの、ヒオ?

 なにやら随分と賑やかなアニメみたいですけど」 

 

 

  「ヘ、ヘイゼル先生?! 違うんですの! さっき大城部長さんが、 『わし、これ好き

 なんじゃよなー。 ヒオ君も為になるから見ておきなさい!』みたいな感じで、問答無用で

 置いていきましたの!」

 

 「まったく、後で八号さんに言っておかないといけませんわねぇ――おや、

 それはそうと、このアニメは確かアレですわね」

 

 

 「あら、先生もご存知なんですの? このアニメ」

 

 

 

 「ええ。これって『今日、開戦上等のホンダゾーン』とかいう番組じゃありませんか?

 戦争大好きの副会長ホンダさんが、“本多ゾーン”とかいうワケワカメな結界張って

 戦争しまくるとかいう、R大往生指定のウォーモンガーアニメでしたわよね?」

 

 

 「その通りですの! ホンダさん、いつも戦争しまくりで凄すぎですの!」

 

 

 

 「ダメですよ、ヒオ。いくら見識を広めるといっても、限度はありますからね。

 ホンダさんはお手本にしたらダメなタイプですわ」

 

 

 「はうっ、気を付けますの! 会議中に笑顔で武力をチラつかせるとか、

 ヒオ絶対にしませんの! でも、先生? それはそうと、このアニメで、

 ヒオ気になることがありますの」

 

 「あらあら、このアニメの何が気になるんですの?」

 

 

 

 「なんかこのアニメ、人狼とか半竜とか魔女とか武神とかお船とか自動人形とか

 色々なGに関係ありそうな人達が出てきてますの! ヒオ、思うんですけど、

 ひょっとしたら、これって私達の世界の未来なんじゃないかって気がしますの!

 

 

 「ホホホ、ヒオは妄想チックですわねぇ。こんな行く先々で『戦争上等なんでヨロシク!』

 みたいな副会長が活躍する世界が、ヒオの世界の未来なわけないですわ。

 他にも精神全裸で奇声発するのが仕事の王様とか、理不尽系無表情自動人形さん

 とか、そんな変な人達が私達に関係してるなんて有り得ませんわよ」

 

 

 「そ、そうですわよね! そんな変な人達、ヒオの周りは 一人も居ませ――」

 

 

 「ちょっ、ちょっと佐山君?! こんなところでスカート脱がさないで!  へ、部屋で

 なきゃダメだよ! えっ? この世界は全て私のプライベート空間だから、いつでも

 OKなのだよ、って? ダメだよ! その丸裸な本性は隠さないとトラブルの元だよ!」

 

 

 「至様。本日のSfの目標は『頑張ろう。そう決めることに意義がある』に決まりました。

 世界一優秀な独逸製自動人形らしい、たいへん奥ゆかしい目標と自負出来ます。

 既に頑張ろう、と決めておりますので、本日の目標は達成されております。

 どうか存分にお褒め下さい。それが至様の望みだと、そう判断しております」

 

 

 

 「……」

 

 

 

 「……」

 

 

 

 「……あの、ヘイゼル先生」

 

 

 

 「……な、なんでしょうか、ヒオ」

 

 

 

 「ヒオ達の世界って……まだ“終わって”ませんよね……」

 

 

 

 「……えっ、ええ。――終わってないと思いますわ。むしろ、どこまでもエンドレスな

 感じがして、これぞ“破滅の転輪”って気がしますけど……」

 

 

 

 「ハッハッハ、新庄君。どこへ行こうというのかね」

 

 

 

 「うおおっ! 目がっ、目がっ! 千里! ちょっと揉んだくらいで目潰しとか、

 鬼ですかよっ、お前は?!」

 

 

 「美影さん! 今日の朝風呂は長めで素敵でしたね! 

 ええっ、覗いてる僕の心まで洗われる気がしたくらいに長めで素敵でした!」

 

 

 

 「……あの、ヘイゼル先生」

 

 

 

 「……解ってますわ、ヒオ」

 

 

 

 「Tes.――来てください! サンダーフェロウ!」

 

 

 

 「Tes.――聞こえていますか? “疾風”!」

 

 

 

 「む?」

 

 

 

 「あん? なんだ?」

 

 

 

 「え……?」

 

 

 

 「「やれ! GO AHEAD!」」