●陽阪・勝意(ひざか・しょうい)

本作主人公。十七歳の『近接格闘師(クリティカルフォーサー)』。幼児期に勃発した『近畿動乱』により両親を失い、自身も死にかけていたところを、南大門神社の跡取りである結城・夕樹に発見され救助される。以後は十五歳まで南大門の食客として、境内の離れに住んでいた。過去の死にかけた時の体験からか、万人が等しく持つはずの『詞(ことば)』を失っており、『己の詞を持たない少年(ディスワーダー)』という字名を持つ。

『詞』とは、様々な効力を発揮する『神器』を使用する際に使用者が詠唱する呪文のようなもの(厳密には違うが)であり、『詞』の内容は各々によって異なっている。通常であれば、使用者が己の『詞』を詠唱することで、その手に持った『神器』の特性を発揮させるという一連のプロセスを経る。これは万人に共通する「絶対的なルール」のはずであり、常識中の常識であった。しかし、勝意は己の『詞』を持たないにも関わらず、常人とは違い、どんな『神器』をも等しく扱うことが出来る。出力こそ落ちるものの、彼はどの『神器』の効力も自分のものとして活用することが出来るという、まさしく異端中の異端である。

身体能力も非常に高く、西日本中学空手選手権で優勝した経歴を持つ。十五歳の時、年上であり居候先の跡取り娘であった夕樹と関係を持った。その際に彼女を「護る」という約束を交わす。しかし、時を置かずして夕樹は襲撃を受け、右目を失ってしまう。傍にいた勝意も額に斬撃を受けて昏倒――気がついた時には、何もかもが終わった後であった。その後、総長連合の役職者を鍛錬・選抜する『御山』と呼ばれる機関にて異例とも言える二年の修行期間を過ごす(通常は半年で卒業)。二年後、十七歳になった勝意は『御山』での修行を終え下山する……あの時の「約束」を守れなかった彼女との再会のために。そして――。

侵攻を開始した東京圏総長である中村秀久の『能力』に対抗出来るほぼ唯一の人間であり、後に『和解動乱』と呼ばれる大事件の中心に立つことになる少年である。セクハラ率、檄高。

――勝意・腕術技能・発動・正拳・成功!

 

 ●結城・夕樹(ゆうき・ゆうき)

本作のメインヒロイン。古都圏総長兼古都圏守護役。舞闘は南大門神術派。人を殺めた過去を持つとされる事から、『殺括者(キリングホルダー)』の字名を持つ。二年前、山下・妙子の兄である山下・義兵の襲撃を受けた際に右目を失明しており、以降は朱い義眼『鳳凰』を入れている。

性格は冷淡で非情――と周囲には思われており、また本人もそのように振舞っているが、実際にはかつて恋人同士であった勝意が評した通り、その性分は『演技と自己完結』であり、内心には強い激情が隠れている。神器『水神』及び『凍神』により水と氷を自在に操り、加えて戦闘型衛星『朱雀四十式』からの粒詞砲による砲撃や自身への流体供給を行うなど、その戦闘能力は極めて高く、敵対した数十人を一瞬で病院送りに出来る力量の持ち主。

二年前の襲撃事件を契機に、恋人であった勝意と決別。以降は古都圏総長及び古都圏守護役として自身を厳しく律している。中村秀久の登場により混迷を極める大阪においても、彼女は自身の職責を持って事態の対応にあたる。そこには事件の渦中で翻弄されるかつての恋人への気遣いは一切ないように見えるのだが……。

巫女で義眼で遠距離でと、後に登場する某ズドン巫女に通じる下地を多く持つキャラクターですが、結城さんの方がやや(←川上世界において『かなり強い』の意)積極的ではないかと。え、何に対してかって? 知りませんよーう。分かりませんよーう。

「陽阪・勝意は必要あらへん」

 

 ●山下・妙子(やました・たえこ)

名護屋圏総長。左腕に巨大な義腕『第八竜帝』を持つ『全方位義体師(スティールマスター)』。勝意とは同じ時期に『御山』で修行した仲であり、彼を出来の悪い弟のように可愛がっている。竹を割ったような快活な性格で、下の者からも厚く慕われており、統率力も高い。

二年前に古都圏総長に任命されたばかりの夕樹を襲撃し死亡した山下・義兵の実の妹。兄の死は彼女の中では決して忘れられてはおらず、内心では夕樹に対して並々ならぬ敵愾心を抱いている。しかし一方では、かつて夕樹と恋人であった勝意を弟分として本気で可愛がってもおり、その性質は決して陰湿ではない。彼女の装着している義腕『第八竜帝』は、その中には雷竜の目が組み込まれており、義腕自体に竜の意思が宿っている。そのために竜が認めた人物にしか本来の力を発揮することがない。そのことからも、彼女の器が決して小さなものではないと窺い知れるだろう。そもそも、彼女の本来の左腕を喪失させたのは、『御山』の総長選抜試験で対戦した勝意なのだから……。

東京からの侵攻に対し、彼女は『戦国都市(タービュレントシティ)-名護屋』の総長として一つの決断を下す。勝つことより、生き延びることを。中村秀久に同行中、期せずして夕樹の襲撃を受けた彼女は、全力を持って夕樹を屠ろうとするのだが……。彼女の到達する「真実」こそ、この物語の基点そのものである。

「竜帝っ! アイツは兄貴の仇だがね!」

 

 ●難波・総一郎(なんば・そういちろう)

大阪圏総長。舞闘は紫電流改。二年前、当時開発中だった言詞加速器『IXOLDE(イゾルデ)』が起こした事故により発生した『鬼』を滅殺した実力者。鬼との戦闘に勝つために、あえて自らの四肢を義体化するなど、武人としての意識が非常に高い。鬼を倒した渡辺綱の末裔であり、左神器『草薙』を継承している。超一流の剣士だが、その半面、全力で刀を振り下ろすと柄や刃が砕けるため、突きや下段からの逆袈裟を多用する。

物語終盤においては、その弱点を克服するために『香港一の五行師』(時期から見てジェイガンと思われる)が作成した『神形具』を携えて決戦に臨む。彼の舞闘である紫電流改は、かつて陰流から生まれ、西に根を下ろした流派である。同じく陰流から派生し東に行った神陰流が存在する。

「紫電流改の流儀に、攻撃以外の言葉はない」

 

 ●結城・繊雅(ゆうき・せんが)

夕樹の祖母。南大門神社の主。当年とって六十七歳のはずだが、本人曰く、「今年で二十五歳」とのこと。元御山・高野山教育長であり現関西寺社連合長。幅広い人脈を持ち、その影響力は政財界とも深く繋がっている。夕樹が幼少期の折に各地を回り、多数の弟子を育て上げている。やがて勃発した『近畿動乱』において戦闘の中心になったのはその弟子達であり、結果的に彼女の教えた『重神器(ヘヴィリズム)』が多くの戦死者を生み出した。

かつては関西一の槍使いと言われていたが、『近畿動乱』の終結後は槍を捨てており、話題に上がるだけで機嫌が悪くなるとのこと。たまに夢にうなされ幾人かの名前を呼ぶらしい。呼ばれた者のうち、二人は既に故人であり、生存しているのは伊庭・優明のみである。

 

 

 ●中村・秀久(なかむら・ひでひさ) 

現東京圏総長。十三年前の『近畿動乱』にて死亡した当時の東京圏総長、中村・緑の実弟。蹴り技主体の『近接格闘師(クリティカルフォーサー)』。恋人である高田・清犠から「王になる」という予言を与えられている。伝説とさえ言われる『奏音の領主(ハルモニスト)』の性質を持ち、更には『ゼノンの矛盾理論』を用いた自身の『記動力』と組み合わせることで、他者とは隔絶した次元の戦闘能力(格闘ゲームで言うところの『当たり判定』を完全にチート化した状態。一定の範囲における対戦相手の攻撃は全て『届かない』状態になり、逆に彼の攻撃に対して相手は回避・ガードが不可になる)を持つに至る。

大阪が開発した巨大言詞加速器『IXOLDE(イゾルデ)』によって復活する最強神器『炎神』を奪取するために、副長の葵・聖や第一特務隊長の池丸・孝弘を率い侵攻を開始した。もともと『炎神』は彼の姉である中村・緑が使用したものであり、彼女の死亡と同時に失われ『幻の神器』とされていた。大阪は、長年に渡りその理論を研究し『炎神』の再開発にこぎ付けたが、彼にとって『炎神』を奪取することは死んだ姉の形見を敵の手から取り戻すことに他ならない。あらゆるものを焼き尽くすとされる『炎神』――その力によって、彼は自身に与えられた「王になる」という予言を成就させることに邁進する。果たして予言は成就するのか? 彼が、その手につかむ未来とは――。

後に刊行された『矛盾都市TOKYO』において、彼の“その後”を想起させる描写があり、その先行きが非常に注目されるキャラクター。某先輩とのタッグなんてあった日には、マジで死ねる位に興奮しますねぇ。

 

「さあ、王になろうか――!」

 

 ●高田・清犠(たかだ・せいぎ)

非凡な力を持つ『速読歴(ファストリーダー)』。人や世界が内包する遺伝詞を読むことで、将来を予言する力を持つ。東京圏総長である中村・秀久の恋人であり、第一特務隊長の池丸・孝弘は従兄弟にあたる。普段は自分からは喋らず、連れている狗神が代わりに彼女の思ったことを代弁する。怖がりで頼りない雰囲気を醸し出しているが、物事の本質を誰よりも見抜く力を備えており、時には非情スレスレとさえ思えるほどの言い切り方をする。戦闘能力は皆無だが、憑いている狗神が本人の恐怖心に反応して巨大化し、様々な脅威を退ける。

中村・秀久を訪ねて大阪の街をさ迷っていたところを勝意と邂逅し、彼に一つの『予言』を与える。彼女によれば運命は絶対ではなく常に変化する可能性を孕んでいるらしいのだが……。本作におけるもう一人のヒロインとも呼ぶべき存在であり、物語全体に大きな転機と衝撃を与える。

個人的には、彼女は『有り得たかもしれない、もう一人のホライゾン』なんじゃないかー、とも思ったりしてます。隣に立つ男が「王になる」とか言っちゃいますし、色々とダブる部分が……。

『だから、迷いが強い人は、その答えも強いと思います』

 

 ●葵・聖(あおい・ひじり)

東京圏副長。舞闘は神陰流葵系葵派。字名は「いい女(本人談)」。普段はオレ口調で話すが、婚約者の池丸・孝弘にだけは女性らしい言葉遣いで接する。対関西の学生用の訓練もかなり積んでおり、対峙した相手の技能を瞬時にコピーし繰り出すことも出来る。副長という肩書きながら、各都市の総長と互角以上に渡り合う実力者。

中村・秀久と共に大阪に侵攻したが、そこには中村への協力とは別の目的も有している。目的は二つ。一つは亡くなった両親が見たという『冬に咲く桜』を探すこと。もう一つは、自分の生まれる切っ掛けともなった、ある流派との完全決着である。

映像化の際には、ぜひ(CV:斉藤千和さん)でお願いしたいですねぇ。

「紫電流改と、母さんがあの男と作った神陰流、どちらが強いのかしら?」

 

 ●池丸・孝弘(いけまる・たかひろ)

東京圏総長連合第一特務隊長。舞闘は帝式真呼流。字名は「闘うビジネスマン(本人談)」。池丸家の次期総代であり、葵・聖の婚約者。総長である中村・秀久には慇懃な口調だが、聖に対しては非常に紳士的な言葉遣いで接する。触れながら語りかけた物質の構造を変化させる『言霊師(ワードマスター)』であり、人体の治療からビルの破壊までと、その応用性と戦闘能力は極めて高い。

中村と共に関西へと侵攻したが、彼の目的はあくまでも婚約者である聖の手助けであり、彼女の求める情報を得るためなら、例え敵であっても取引に応じる。唇から相手の遺伝詞を読めるため、本番キスはあえてしない。が、彼女にどんな下着が似合うかが判断出来る程度の想像力は備えているらしい。父親は『臨時内閣対特殊領域部隊GASAS(ガサス)』の池丸・孝一。チッ、なんで第一特務って奴らは――。

 

 

 ●伊庭・優明(いば・まさあき)

中村・秀久の師。『近畿動乱』唯一の生き残り。十三年前は大阪圏の第一特務隊長をしていた。当時の総長連合関係者の多くがそうであったように、彼もまた結城・繊雅の手ほどきを受けている。当時の大阪圏総長である久木・右大と、東京圏総長であった中村・緑の死に立ち会った人物であり、その時の出来事によって師である結城・繊雅を激しく恨んでいる。